2017.09.15

【橋本対里村 11ヶ月ぶりの再戦は、王者対象徴の戦い】

昨年10月16日の王座交代から約11カ月、場所も同じ仙台サンプラザホールで、ついに橋本千紘と里村明衣子のリターンマッチが行われる。前回とは王者と挑戦者の立場が入れ替わっての再戦は、闘う当時者である橋本と里村、そして今後のセンダイガールズにとって、どのような意味を持っているのだろうか?

前回の対戦からの約11カ月、より濃密な時間を過ごしてきたのは、間違いなく橋本の方である。アジャ・コングと松本浩代に敗れて、2度の王座転落を経験したものの、いずれもリターンマッチで王座奪回に成功。この2回の奪回戦で決まり手となったオブライト(ジャーマン・スープレックス)は、決まれば必ずカウント3を奪うことができる、絶対的な必殺技に成長した。

対する里村は昨年11月の博多大会で、橋本への挑戦権を賭けたアジャ戦に敗北。6月の札幌大会では木村花とのコンビで、志田光&朱里組が保持していたタッグ王座に挑むも王座奪取に失敗するなど、戦績は橋本に比べれば芳しくない。2度の王座転落と奪回を経験した橋本が、この11ヵ月でさらに成長していることを考えれば、今回の一騎打ちはいささか分が悪いと考えることもできる。

しかしながら単純に橋本有利と断言できないのが、今回の師弟対決の面白くも奥深いところである。まず、前回の対戦で最後の最後に初めて食らったオブライトに沈んだものの、試合の7割くらいは里村が支配していた。師弟対決では弟子の長所も弱点も知り尽くしている師匠が、基本的には圧倒的に有利なのだ。しかも一度は苦杯を喫しているがゆえに、里村のオブライト対策は万全。実際、7月以降に橋本と里村はタッグ、6人タッグで6回対戦しているが、いずれも里村がいるチームが勝利。8月19日にタッグで対戦した際には、里村が橋本をスリーパーで絞め落としている。このように直近の戦績に関しては、里村の方が圧倒的に優勢なのだ。

ことほどさように勝敗が読みにくい今回の橋本対里村戦。意外なことに王者の橋本にとって今回の里村戦が、本拠地である仙台で行う初の防衛戦になる。ましてや相手が団体の象徴である里村となれば、その勝敗にはベルトのみならず、センダイガールズの象徴の座もかかってくるのは必然だろう。この11カ月間の橋本の活躍は見事なものながら、それでも団体の象徴としての里村の存在感は、いささかも揺らいでいるようには見えない。そんな彼女だからこそ、女子プロレス界の横綱と呼ばれているのである。
王者と象徴。

里村が勝てばその両方を手にする。対する橋本は、勝てば絶対王者としての第一歩を踏み出すことになるだろうが、象徴の座まで奪い取ることができるか否かは試合内容次第。ベルトは一度の勝ち負けで動くが、里村が積み重ねてきた22年のキャリアと、センダイガールズ旗揚げからの11年は、一度の勝敗で覆すことができるほど軽いものではないからだ。

王者対象徴の対決が終わった時、センダイガールズのリング上には、どのような新たな風景が見えているのだろうか?

文・須山浩継